2014年8月25日月曜日

危険ドラッグ欲しさにひったくり、フィリピン人不良少年グループの実態とは…

危険ドラッグ欲しさにひったくり、フィリピン人不良少年グループの実態とは…

産経新聞 8月23日(土)21時10分配信


 危険ドラッグ(脱法ドラッグ)欲しさにひったくりを繰り返していたのは、フィリピン国籍やそのハーフの少年らでつくる不良グループのメンバーだった。少年らは「ピノイ・プライド・チル(PPC)」を名乗り、東京・錦糸町を中心に約200人のメンバーがいると豪語。中国残留孤児の2世、3世を中心とした「怒羅権(ドラゴン)」を連想させるが、果たしてその実態とは…。

■「危険ドラッグ買った」…酔客狙い、自転車3台で

 7月25日午前3時すぎ、東京都台東区浅草橋の路上で、酒を飲んで歩いて帰宅途中だった派遣社員の女性(47)の脇をスピードを出した自転車3台が追い抜くやいなや、女性の左手から現金約1万円入りの財布などが入った手提げバッグを奪っていった。

 女性は110番通報したものの、酒に酔っていたことから、追いかけることもかなわず、自転車3台はそのまま夜の闇に吸い込まれていった。ところが、犯人は自分たちから尻尾を出す。間もなく千葉県市川市内のラブホテルで、奪われた女性のクレジットカードが使われたのだ。

 警視庁蔵前署員が駆けつけたところ、ホテルにいた3人がカードを使ったことを認めるなどしたため、荒川区に住むフィリピン人と日本人のハーフの少年(19)と、いずれも墨田区に住むフィリピン国籍の16歳と18歳の少年の計3人を窃盗容疑で逮捕した。

 少年らは不良グループ「PPC」のメンバーを名乗り、少年事件課の取り調べには素直に容疑を認め、こう供述した。

 「奪った財布に入っていたカネで、危険ドラッグを買った」

■「嫌なことを忘れ、いい気分に」…犯行直前に吸引、異常なテンション

 ひったくり事件から遡(さかのぼ)ること約3時間半前の25日午後11時半ごろ、千葉県市川市のJR市川駅周辺で、異様なテンションでじゃれあう3人の姿があった。

 酒の臭いはしない。代わりに、危険ドラッグ特有の甘ったるい人工的な香料の臭いがうっすらと漂う。3人は市川駅前に危険ドラッグを宅配させて購入。すぐに火を付け、吸引していたのだ。だが、それだけで満足できなかったようだ。

 2~3時間後、拠点とする東京・錦糸町に戻ると、ハーフの少年がひったくりを持ちかけた。自転車は2台しかなかったが、2人乗りでは警察官に職務質問される恐れがあるため、1台を盗んで調達。抵抗しなさそうな通行人を物色して犯行に及んだという。

 盗んだカネは、また危険ドラッグのために使われた。3人は市川駅前に戻り、さきほど危険ドラッグを頼んだばかりの宅配店に電話。「浦安ならまだ買える」と言われ、浦安駅まで移動して危険ドラッグを購入して吸引した。

 「嫌なことを忘れていい気分になりたかった」「テンションが上がるからやった」などと捜査員に説明しているという3人は、1~2年前から危険ドラッグを常用。借金の返済や遊びよりも、危険ドラッグを購入することを何よりも優先するようになっていた。

 少年らの自宅からは、危険ドラッグの商品名「スパイラル」の空き袋2つが見つかっており、少年事件課は薬事法上の指定薬物が含まれている可能性があるとみて鑑定を進めている。

■「フィリピン魂」+「かっこいい」 主な活動はコンビニ店での「たむろ」

 ピノイ・プライド・チル-。少年らが口にした謎のグループはどんな集団なのか。警視庁幹部は「少年らを逮捕するまで、名前を聞いたこともなかった」といぶかしむ。

 外国がからむ不良グループとしては、中国残留孤児の2世、3世を中心とする「怒羅権」が有名だ。強い縄張り意識があり、指定暴力団との抗争も辞さず、振り込め詐欺や強盗などの組織的な犯罪にも手を染める。昨年3月には、警察当局から準暴力団に位置づけられた。

 PPCはどうなのか。

 「ピノイ・プライド」は直訳すると、「フィリピン人の誇り」で、いわば「大和魂」のフィリピン版。警視庁幹部によると、これに「かっこいい」「クール」などを意味する「チル」を付け加えたのが、組織名の由来とされる。

 インターネット上の交流サイト「フェイスクブック」に開設されたPPCのページには、平成21年4月6日に設立されたと明記され、英語で来歴まで書いてある。

 「PPC、またの名を極道。都内の有志の若者で構成され、日本警察の要請を受けてメディアは暴力団と呼ぶ。その行動と過激な性質で悪名高く、錦糸町では特に名をはせている」

 このページを詳しく見ると、PPCのメンバーの主な活動はコンビニ店前や路上での、しばしば酒を伴った「Tamuro(たむろ)」。「PPCの2012年での定義は『一つの愛』」と意味不明な書き込みもあり、ネット上で公開されたPPCのメンバーがプールで遊ぶ様子を写したビデオを見ても、凶悪性はあまり感じられない。

 捜査関係者は「不良に毛が生えたようなグループではないか」と分析。「ひったくりや万引などの犯罪に手を染める程度で、とても暴力団に対抗することはできない組織」とみている。

 ただ、逮捕された少年3人は今回の事件を含め、少なくとも3件のひったくりや車上狙いなどに関与していたとみられ、犯罪行為を繰り返していたグループであることに変わりはない。捜査関係者はこう言って気を引き締める。

 「怒羅権などの凶悪な犯罪組織に発展する前に、少年らを更正させていくことが警察の使命だ」



2014年8月19日火曜日

危険ドラッグ、ネット販売主流に 自己流調合も広まる

危険ドラッグ、ネット販売主流に 自己流調合も広まる

朝日新聞デジタル 8月18日(月)5時32分配信




客足が遠のき、店舗数も減った。代わりにインターネットでの販売が増えている、という。東京・池袋であった危険ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の使用者による8人死傷事故から約2カ月。事故直後に取材した店を再び訪ねた。




 東京・歌舞伎町にある専門店。約15平方メートルの店内では、ショーケースに20種類ほどのドラッグが並んでいたが、種類は事故直後からすべて入れ替わっていた。規制が厳しくなるなかで、対象になったドラッグを品ぞろえからはずしたという。

 「客足は落ちました。7月の売り上げは6月に比べて半分です」と男性店員。常連客はお気に入りのドラッグがなくなれば、他店に流れる。事故以降、警察の見回り回数が増えたことも影響しているという。

危険ドラッグ鑑定依頼が殺到 半年で3千件、現場は悲鳴

危険ドラッグ鑑定依頼が殺到 半年で3千件、現場は悲鳴

朝日新聞デジタル 8月19日(火)11時42分配信



国内で急激な広がりを見せる危険ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)。その影響は、警察の薬物鑑定や税関の水際対策の現場にも及んでいる。次々と持ち込まれる鑑定依頼や不審な輸入物を前に、担当者からは悲鳴にも似た声が上がっている。



 警視庁で危険ドラッグの鑑定作業を担う科学捜査研究所。「つい最近まで、覚醒剤や大麻が鑑定のメーンで、危険ドラッグはサブ。それがもう、完全に入れ替わった」。科捜研幹部はため息交じりに話す。

 各警察署などからの危険ドラッグの鑑定依頼が爆発的に増えたのは2月ごろ。月数十件程度だった依頼がこの半年間で計約3千件に上った。薬事法で定める規制薬物を含むドラッグについて、4月から所持や使用も新たに禁じられ、各署で積極的な取り締まりに乗り出したからだ。