2017年1月5日木曜日

覚醒剤の今年の押収量1トン以上 統計上2番目か 年末年始は「重要なシノギ」

覚醒剤の今年の押収量1トン以上 統計上2番目か 年末年始は「重要なシノギ」




平成28年に全国の警察が押収した覚醒剤は1トン(末端価格約700億円)を超え、27年の約429・8キロ(同約300億円)の倍以上となっている。警察庁によると、覚醒剤の年間の押収量は統計を取り始めた昭和31年以降、平成11年の約2トンが過去最高。これに12年の約1トンが続いていたが、28年は過去2番目となる見通しだ。蔓延(まんえん)が危惧され、警察当局は取り締まりを強化する。(社会部 尾島正洋)

■清原元選手ら著名人の逮捕相次ぐ

 年末年始は警察や税関の取り締まりが強化されるため、暴力団関係者の覚醒剤の仕入れ値が高騰するというが、暴力団幹部は「需要は多い。年末年始は仕入れ値が高くても、逮捕される危険があっても、重要なシノギ(資金源)だ」と実情を明かす。

 警察庁によると、過去5年の覚醒剤の押収量は25年に約831・9キロと大量押収となったが、それ以外の年は300キロ~400キロで推移。23年=約338・8キロ▽24年=約348・5キロ▽26年=約487・5キロ▽27年=約429・8キロ-となっていた。

 押収量が今年に入って急増したのは、福岡、鹿児島両県警が2月、約100キロを押収したほか、沖縄県警が5月に約597キロを押収。警視庁も7月に約154キロ、10月には約152キロを押収するなど全国各地で大量押収があったためだ。

 今年の押収量は、統計の精査が終わってないため確定していないが、既に1トンを超えており、11年の押収量の1026・9キロを超す見通しとなっているという。

 2月には元プロ野球選手清原和博さんが、6月には元俳優の高知東生(本名・大崎丈二)さんが覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されるなど著名人の摘発が相次いだほか、9月には愛知県で中学3年の女子生徒が同法違反容疑で逮捕されるなど蔓延が懸念されている。

■供給過多か…末端価格は下落傾向

 覚醒剤1グラム当たりの末端価格は、警察庁の調査で21年は9万円だったが、22~23年は8万円に下落し24年以降は7万円と値崩れしている。

 価格が下落傾向のままとなっている現状について、警察庁幹部は「供給過多となっているため、価格が下落した状態が続いていることが推測される」と危機感を募らせている。

 「今年は各地で大量に押収しているが、把握できていない覚醒剤が流入していることも伺える。さらに取り締まりを強化しなければならない」としている。

 警察庁によると、過去に3度にわたり覚醒剤の蔓延時期があり、取り締まりと流通の攻防が続けられてきた。昭和20年代の戦後の混乱期を第1次乱用期、続いて暴力団などが本格的に資金源とした昭和後期を第2次乱用期、平成9年ごろにイラン人の密売組織が街頭で無差別に売りさばいていた時期を第3次乱用期としている。

 今年は統計上、過去2番目となるほどの大量に押収されているため、第4次乱用期となることが危惧される。

■暴力団の密売が横行

 今年になり、警察当局が覚醒剤を大量押収している背景には、暴力団が本格的に密売に乗り出していることがあるとみられる。平成23年10月までに全国で整備された暴力団排除条例で資金源を規制された影響があるという。

 暴力団幹部は「縄張り内の飲食店などからの毎月の集金が100万円以上あったが、条例ができてからゼロになった」と明かす。

 多くの暴力団は表向き、「覚醒剤取引は禁止」としているが、こうした環境の変化から、資金獲得のため暴力団が覚醒剤取引を行っているという。

 覚醒剤はほぼ全量が海外から密輸される。暴力団関係者らの仕入れ値は1キロ当たり700万円~900万円とされ、末端価格の7万円で全て売りさばけば、売り上げは7千万円となり利益は莫大(ばくだい)になる。

 暴力団幹部は「年末年始も需要は安定的に高い。しかし、警察や税関などの取り締まりが強化されるため、(覚醒剤取引の)危険は大きい」と話す。

 危険度が高いために仕入れ価格は1200万円~1400万円と跳ね上がるが、「サラリーマンや主婦など、お客さんは多いから、リスクを背負ってでも仕入れに向かう」という。福岡県警などが2月に約100キロを押収した際に逮捕したのは指定暴力団神戸山口組の幹部だった。

 大量に覚醒剤を所持していたとして逮捕された容疑者が暴力団構成員などでなくても、暴力団幹部は「違法薬物の取引で暴力団との関係がないことは絶対にない。必ず暴力団がバックについていて、密輸や国内での密売が行われる。われわれに何も知らせずに(縄張り内で)密売していたら、そこで大問題になる」と事情を話す。

 地域によって差はあるが、供給過多で大量流通を裏付けるように、最近は末端価格が1グラム当たり7万円からさらに下落傾向にあるという。暴力団幹部は最近の覚醒剤市場の傾向をこう説明した。

 「(1グラム当たり)5万円からさらに安く買いたたかれ、3万円ということもある。買い手市場となっている」

大麻キャンディー密輸した疑い 米国籍の男を再逮捕

大麻キャンディー密輸した疑い 米国籍の男を再逮捕




大麻成分の入ったキャンディー208個を米国から輸入したとして、神奈川県警が5日、米国籍の30代の男を大麻取締法違反(密輸)の疑いで再逮捕したことが、捜査関係者への取材でわかった。男は「個人で使う分を友人に送ってもらっていた」と容疑を認めているという。

 捜査関係者によると、横浜税関川崎外郵出張所(川崎市川崎区)の職員が昨年12月、国際郵便に大麻成分入りのキャンディーが入っているのを発見。中身を入れ替えて送り、受取人を捜査したところ、長野県に滞在していた男が荷物を受け取ったため、同月15日に麻薬特例法違反(所持)容疑で現行犯逮捕したという。

 大麻キャンディーはなめると大麻を吸ったのと同じような状態になるという。

慶大麻酔医、危険ドラッグ輸入容疑で逮捕

慶大麻酔医、危険ドラッグ輸入容疑で逮捕




危険ドラッグを輸入したとして、神奈川県警と横浜税関は10日、慶応大学病院麻酔科医師(49)(東京都品川区)を医薬品医療機器法違反(指定薬物輸入)と関税法違反の疑いで逮捕したと発表した。

発表によると、医師は昨年9月28日、医薬品医療機器法で指定薬物になっている亜硝酸イソプロピルを含む液体が入った小瓶10本を、イギリスから国際郵便で空輸した疑い。「輸入したのは間違いないが、輸入してはいけないものだとは知らなかった」などと容疑を否認しているという。
 横浜税関川崎外郵出張所(川崎市川崎区)で、税関職員が発見した。
 捜査関係者によると、医師は約20年前から購入を始め、約10年前からは海外のインターネットサイトを通じた取引を始めたと説明している。また、医師の自宅の捜索で、危険ドラッグの空き瓶約15本が見つかったという。



なめる大麻キャンディー200個を密輸容疑

なめる大麻キャンディー200個を密輸容疑



大麻を含有するキャンディー約200個などを密輸したとして、神奈川県警が米国籍の男(36)を大麻取締法違反(輸入)容疑で逮捕したことが捜査関係者への取材でわかった。

 関係者によると、男は昨年11月、米国から大麻キャンディー約200個(計約1・5キロ・グラム)と、乾燥大麻約7・5グラムを国際郵便で発送させ、輸入した疑い。一度に見つかったものとしては異例の量という。

 12月に横浜税関川崎外郵出張所の検査で発見され、税関当局が中身を入れ替えたうえで、県警と合同で捜査を継続。同月に受け取りに来た男を県警が麻薬特例法違反(規制薬物としての所持)容疑で現行犯逮捕し、今月5日に大麻取締法違反容疑で再逮捕した。男はどちらの容疑についても認めているといい、県警は入手元などを捜査している。大麻キャンディーは、大麻成分をあめに混ぜたもので、口に含んで使用するという。

コカイン摘発倍増、上半期で172件「第3のドラッグ拡大急速」 簡易鑑定キットの精度低く

コカイン摘発倍増、上半期で172件「第3のドラッグ拡大急速」 簡易鑑定キットの精度低く


 「麻薬及び向精神薬取締法」で使用や所持などが禁止されているコカインについて、今年上半期の摘発件数が前年同期の86件から2倍の172件に達したことが30日、警察庁への取材で分かった。使用疑惑を報じられた俳優が芸能界引退に追い込まれたことでも注目を集めたが、捜査幹部は「いまやコカインは大麻、覚醒剤に続く第3のドラッグ。拡大は急速だ」と警戒感を強めている。


警察庁によると、コカインに関する事件の過去10年の摘発件数は、平成20年の261件をピークに5年連続で減少。25年には97件と100件を切っていた。しかし、26年には144件となって増加に転じ、昨年は前年比約60%増の230件と急上昇した。さらに今年1~6月の摘発件数は前年同期の86件から2倍の172件に達した。

 コカインは1グラム6万円前後(末端価格)で取引されており、暴力団関係者は「末端価格は覚醒剤と大差ないが、覚醒剤よりも使用頻度が高くなる傾向にあり、コストがかかる。そのため、一部で『セレブドラッグ』とも呼ばれており、芸能人や富裕層が多く出入りする東京・六本木や西麻布などで多く流通している」と話す。

 乱用者は主に鼻から吸い込んだり、加熱して蒸気を吸い込むなどして摂取するという。薬物に詳しい国立精神・神経医療研究センターの舩田正彦室長は「覚醒剤と似た興奮作用と爽快感、多幸感をもたらす。2~3時間ほど効果が持続する覚醒剤と違い、コカインは摂取してから5~10分ほどで薬効が表れて30分程度で切れる」と説明する。

 ■1~2日で排出

 乱用が広がるコカインだが摘発は容易ではない。

 その一つが簡易鑑定キットの精度の低さだ。25年10月、警視庁は簡易鑑定でコカインの反応を示した粉末を所持していた男性を現行犯逮捕したが、その後の鑑定で粉末が別の脱法ドラッグ(当時)と判明。警視庁は誤鑑定を防ぐため、コカインの簡易鑑定キットの使用を原則中止している。

 コカインの体内での残存期間も短く、早ければ1~2日程度で成分が体内から排出される。警視庁の捜査員は「捜査にはスピード感が求められるが、簡易鑑定で陽性反応が出たら摘発に踏み切れる覚醒剤とは違って、本鑑定を待たなくてはならない」と苦悩を語る。

 捜査当局が手をこまねく間に密輸事案も起きた。横浜港で9月、船の積み荷からコカインとみられる約100キロの粉末が見つかった。全てコカインと判明すれば末端価格は約60億円、1度の押収量としては過去2番目だという。

 捜査幹部は「覚醒剤のように暴力団などが絡む組織的な密輸ルートはまだ確立されていないとみられるが、国内の拡大は事実。早急な対策が必要だ」と話している。