<危険ドラッグ>販売店激減 集中取り締まりで
全国の危険ドラッグの販売店がこの半年で3分の1に減っていることが厚生労働省への取材で分かった。今年3月末で215店が確認されたが、9月末は78店だった。厚労省は最近の集中的な取り締まりで多くの業者が廃業に追い込まれたとみている。ただ、店を閉じて配達専門に切り替える業者もいるとみられ、捜査当局は監視を強めている。
危険ドラッグの販売店は雑居ビルの一室や古民家に入居し、「ハーブ」「お香」などと表示してドラッグを売るところが多い。厚労省は各都道府県などの情報を通じて定期的に店の数を集計しているという。
厚労省によると、初めて調査した2012年3月末は337店を確認した。1年後の13年3月末は217店で、今年3月末もほぼ同数だった。しかし、9月末になるとその3分の1になっていた。大阪では3月末の37店が6店に減っていた。
12年3月末から13年3月末に100店以上減ったのは、危険ドラッグに使われる化学物質を幅広く規制する「包括指定」の導入が12年末に決まった影響とみられるという。化学構造を変えた新種が出回らないよう、構造が似た物質をまとめて薬事法の指定薬物として取り締まるものだ。
一方、東京・池袋で6月、危険ドラッグを吸った男の車が暴走し8人が死傷するなど、各地で危険ドラッグが原因とされる事故が多発、警察や厚労省が取り締まりを強化した。
厚労省の場合、全国の厚生局麻薬取締部による店の立ち入り検査で、全種類の危険ドラッグ商品を一つずつ回収、違法薬物かどうかの検査結果が出るまで販売を中止させた。こうした影響で商品が売れなくなり、廃業に追い込まれた業者が増えたとみられるという。
ただ、厚労省の担当者は「配達専門やネット通販となって潜在化する可能性もある」と警戒を強めている。【池田知広】
◇「逮捕リスク増え、廃業」
「売れなくなったし、逮捕されるリスクが増え、廃業を決めた」
大阪府内で危険ドラッグの販売店を営んでいた30代男性は8月下旬に店を閉めた。
商店街の一角に小さな店を開いたのは昨年夏。「月に500万~600万円売れる。絶対に捕まらない」と、別の店を営業していた友人に誘われた。危険ドラッグの仕入れ先リストももらい、従業員を数人雇った。
粉末状のパウダーや「ハーブ」を1パッケージ約1500円で仕入れ、約4500円で売った。多い時で約40種類の商品をそろえた。ツイッターで「合法ハーブあります」「早朝まで営業」と情報発信したり、店のシャッターに危険ドラッグ店の目印とされる赤、黄、緑の3色をペンキで塗ったりすると客足が伸びた。
客は若者が中心だが、ベビーカーを押して来る夫婦もいた。昨年秋には月120万円を売り上げ、月平均30万円の利益が入った。
しかし、東京・池袋の暴走事故を機に危険ドラッグの問題が大きくなり、客が来なくなった。今年7月の売り上げは約10万円、8月はほぼゼロだった。そして麻薬取締部の立ち入り検査を受け、こう言われたという。「店を続けるなら毎日でも検査に来る。その覚悟があるか」
男性は取材に「売れないし、摘発されたら割に合わない。手を引くしかないと思った」と淡々と話した。
大阪・ミナミで営業していた別の男性も8月に店をたたんだ。最盛期は月数百万円を売り上げたが、取り締まりが強まり、仕入れも難しくなった。売り上げは以前の10分の1に減った。
男性はこう指摘する。「店は減っても吸いたい客はごまんといる。通販などで地下に潜り、販売を再開した業者もいる」【池田知広】