生徒の薬物問題、啓発限界 京都府・市教委、再発防止策を強化
昨秋以降、京都市内の中高生らが大麻取締法違反容疑で逮捕された事件を受け、京都府、京都市両教育委員会が再発防止策を強化している。生徒指導の徹底や小中高での薬物乱用防止教室の開催が主な柱だ。一方で啓発活動による抑止効果の限界も見え、踏み込んだ対応が求められている。
南区の京都テルサに10日、府南部の公立小中高で生徒指導や保健指導にあたる教員らが集まった。府教委が開いた薬物乱用防止教育の研修会だ。
講師に立った京都府警の村山三鶴少年課長は「薬物乱用は見えないところで進む。高校生だけでなく、中学生の間にも大麻が広がっていると考えるべきだ」と訴えた。生徒指導における力点や指導計画を考える講習もあった。
研修会は府北部の教員を対象に綾部市でも17日に開いた。参加者は2会場で計約540人。薬物乱用防止の研修では異例の規模で、企画した保健体育課は「教員に危機感を持ってもらえた」と手応えを語る。
一方、研修会では課題も示された。
村山少年課長は「昨年検挙した少年の中には薬物乱用防止教室を受けた者もいた」と説明した。
生徒指導も難しさを増している。高校生に大麻が広がったきっかけとして中学時代や地元の交友関係が例に挙がったが、公立高関係者は「生徒の地元での行動や人間関係がつかみにくくなっている」と打ち明ける。京都市・乙訓地域の公立高は2年前の入試改革で通学範囲が広がり、出身中学が多様化したためだ。
府教委高校教育課の深田聡総括指導主事は「大麻使用はたばこがきっかけになりやすい。小中学生の段階で喫煙をやめるよう踏み込んで指導することが必要だ。中高の連携もさらに密にしなければならない」と強調する。
花園大の橋本和明教授(非行臨床学)は「大麻に刺激を求める少年は空虚感や満たされなさを感じている」と指摘し、学力保障や親子関係を未然に防ぐ鍵に挙げる。「最低限の学力がないと将来を見越した行動は難しい。落ちこぼれを生まない教育支援こそが大事だ。家庭にも事情があるだろうが、親はささやかでも子どもを気遣う工夫を考えてほしい。それが心の隙間を埋めることにつながる」
■昨年、府内少年11人摘発
京都府内で昨年に大麻取締法違反容疑で逮捕、書類送検された少年は前年より9人多い11人で、高校生が6人含まれていた。今年3月にも中学生と高校生ら少年3人が逮捕されている。
逮捕者の中には府立高生もおり、府教委は対策を打ち出した。府立高校長には地元警察署と連携し、生徒の非行情報を共有するよう指示。薬物乱用防止教室も全府立高で実施した。本年度は小中高のPTAを対象にした薬物乱用防止教室を新たに予定する。
京都市教委も6月に市立学校の教員を対象に研修会を開く。薬物乱用教室も市立の全中高で開催を計画し、小学校では完全実施を目指す。子育て関連団体にも薬物乱用対策を年間の重点課題とするよう呼び掛けた。
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